東京高等裁判所 平成2年(ラ)75号 決定
前記認定事実によれば、抗告人らの父愃于は昭和三九以来二五年以上にわたって抗告人らの母と同居関係を継続し、その間に抗告人らを順次もうけて養育したもので、その生活関係は社会通念に照らし定着しているものということができる。一方、愃于と本妻である貞子はその間全く往き来がなく完全な別居状態にあり、その婚姻関係は実質的には既に破綻している状態にあるといわざるを得ない。抗告人らは、出生以来事実上父の氏である「内田」姓を一貫して呼称し、今日既に二二才あるいは一七才に達しているのであって、今後就職、進学あるいは高校生活等に様々な支障が生じることを心配して氏の変更を強く望んでおり、氏の変更を求める必要性は顕著なものがあると認められる。ところで、貞子が氏の変更に反対する主な理由は、愃于が理緒を貞子に無断で養子に出したこと、長年にわたり妻子を放置してこれを顧みることがなかったこと、さらには、今後聡らに迷惑がかかるおそれがあること等であり、このような心情は理解し得ないではないが、理緒と愃于は現在交流が続いており、また、聡は平成元年六月に婚姻して新生活を営んでいること及び愃于と貞子の婚姻関係は実質的に破綻状態にあることを考慮すると、抗告人らの氏の変更を認めても、そのために右婚姻関係の現状が更に悪化したり、あるいは聡ら嫡出子の生活関係に格別の悪影響が生じるとは考え難い。これらの事情並びに前記認定事実を総合考慮すると、本件においては、抗告人らが子の氏の変更によって受ける社会生活上の利益が優先するものと認められる。
従って、抗告人らの氏を父の氏である「内田」に変更することを求める本件許可の申立ては理由があるから、これを認容すべきであり、本件申立てを却下した原審判は失当である。
(藤井 伊東 大藤)